涙は最高の点眼薬?ドライアイと涙の意外な関係
目の健康
コンタクトレンズ愛用者が気をつけなくてはいけない、瞳の乾燥対策として有効な「涙」。でも実は、涙でうるうるしている瞳ほどドライアイになりやすいかもしれないことをご存知ですか。涙の優れた効果と併せてご紹介します。
優秀な涙の成分と働き
涙のしょっぱさは塩分からきていますが、塩分の主な成分はナトリウムです。その他、涙にはカリウムなどの電解質、タンパク質や抗菌作用がある成分が全体の2%ほど含まれており、感染症やアレルギーを防ぐ有効な点眼薬の役割をはたしています。
涙に近い点眼薬を開発するのは困難で、完璧に近い点眼薬はまだ開発されていません。自分の体から分泌される涙が一番の点眼薬というのは、改めて人体のメカニズムの凄さを感じさせます。
涙は「油膜」「涙液層」「ムチン層」の3層で構成されており、それぞれ瞳の乾燥を防ぐ重要な役割をもっています。
角膜の表面は水をはじく性質をもっていますが、油は瞳を潤す水分を包み込み、ムチンは涙の有効成分を瞳にとどめる「ノリ」のような働きがあります。
涙には2つの「質」がある
多くの人を悩せるドライアイは、涙の分泌量が減って瞳が乾燥してしまう症状です。パソコンやスマートフォンの長時間使用による瞬きの減少、エアコンによる空気の乾燥など要因はさまざまで、今や2人に1人はドライアイの予備軍ともいわれています。
ドライアイは瞳の乾燥によるものなので、常に瞳が涙で潤っていればいいと思ってしまいますが、そこには意外な落とし穴が。同じ涙でも”しっとり”タイプと”さらさら”タイプに分かれており、いつも瞳がうるうるしている涙目のような状態は、ドライアイの症状が進行している可能性があるのです。
涙の質には、主に「基礎分泌」と「刺激分泌」の2種類があります。基礎分泌はその名の通り、瞳の表面を潤すために出ている涙のことで一定のサイクルで入れ替わっています。
それに対し刺激分泌は、痛みや玉ねぎを切ったとき、または悲しいときに出る涙です。たとえば、目にホコリが入ったときに洗い流してくれる涙は刺激分泌に分類されます。
刺激分泌の涙は、触ってみるとさらさらとしています。粘度が低いのは、異物を洗い流すという役割があるため。一方、基礎分泌の涙は瞳を覆って潤す役割があるのでしっとりとしています。
うるうる瞳なのにドライアイの症状が進んでいるというのは、瞳がドライアイによるホコリや乾燥で常に刺激を受けており、刺激分泌がおこなわれているということです。さらさらとした刺激分泌の涙は瞳にとどまらず流れ出てしまうので、常に涙目になってしまうのです。
ドライアイには、「涙×瞬き」が有効
涙は上まぶたの外側にある器官「主涙線」で作られて涙点という穴から流れ落ちてきます。涙を分泌する刺激となるのは瞬きです。涙は目の表面のゴミを取り除きながら鼻の中に排出されており、同時に瞳への有効成分の補給まで行っています。
ドライアイは女性の方がなりやすい?
「涙は女の武器」と形容されるように、男性より女性の方が涙を流しやすいイメージがあるかもしれません。女性の心が繊細というわけではなく、実は科学的な根拠があるのです。
女性が涙を流しやすい理由には「プロラクチン」というホルモンが関係しています。女性ホルモンのひとつで目の涙腺にもあることが最近の研究で判明しました。このホルモンの影響で、女性は涙腺が刺激されやすく、涙もろいのではないかといわれています。
また、女性はドライアイになりやすいという研究結果もあります。ドライアイは、男性は20代、女性は60代にピークがあるそうで、男性約20%に対し、女性約41%と明らかに女性に多い結果が出ました。
性別によるドライアイの差は、やはりホルモンの影響があるそうです。目の表面の涙液層には3つの層がありますが、そのひとつ、油層を形成して涙の過剰な蒸発を抑える機能が男性よりも弱いといわれています。
涙腺を保護的に働いているホルモンを「アンドロゲン」と言いますが、女性はもともと男性ホルモンであるアンドロゲンが少なく、ドライアイになりやすい理由の一つとして挙げられているのです。
さらに女性が使用するさまざまな化粧品が目の表面に入りやすく、これもドライアイの悪循環のひとつと考えられています。
ドライアイに効果的?涙を作る栄養素をご紹介
ドライアイは、涙の分泌量が減って瞳が乾燥してしまうことが原因です。瞳の表面を潤す「基礎分泌の涙」を補うために有効な栄養素と、それらの栄養素が豊富に含まれる食べ物を紹介します。
アントシアニン
目全体の健康に重要な成分。
多く含まれる食べ物:ベリー系の食べ物(ブルーベリー、ラズベリーなど)ぶどう、さくらんぼ、スイカ、紫芋など
アスタキサンチン
疲れ目を防ぐ成分。
多く含まれる食べ物:蟹、イクラ、鮭など
リコピン
目のダメージを和らげる成分。
多く含まれる食べ物:トマト、グレープフルーツ、すいかなど
ルテイン
紫外線などから目を守る成分。
多く含まれる食べ物:かぼちゃ、ニンジン、卵黄
カロテン(ビタミンA)
多く含まれる食べ物:ニンジン、赤身のお肉・お魚、トマト、レバーなど
赤みの強い食べ物が多いので積極的に摂ってみてください。もちろん、これらの食べ物を食べればドライアイが治るというわけではありません。症状がひどくなったり、生活に支障をきたしてしまった場合には、迷わず眼科へ行きましょう。
まとめ
自分の体から分泌される、最も優れた点眼薬ともえいる涙。瞬きするたびに瞳を掃除して、有効成分を行きわたらせてくれる、眼の健康にとってなくてはならない存在です。
上手に涙を分泌させて、瞳の潤いを保ちましょう。